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【イベントレポート】デイリーポータルZの林雄司さんの特別講演

アルファブロガー・アウォードの結果発表のまえに、デイリーポータルZの林雄司さんによる、特別講演がありました。

ところで、デイリーポータルZは、プロの編集者などによるサイトと思われる人もいるかもしれませんが、じつはニフティの社員である林さんの個人的発想から生まれ、そして林さん自身が「これは面白いんじゃないかな?」と思った企画で運営され続けているサイトなんです。

ブログが登場したことで、個人の発信したものが影響力を持つようになったといわれるけれど、個人の発想からスタートし、いまも人を惹きつけているデイリーポータルZは、その兄貴的存在というわけですね。

林さんが行った11分ほどの特別講演は、聴衆から常に笑いを誘うお話でした。要約してしまうのはもったいないので、デイリーポータルZの成り立ちのところからテープ起こしをしたものをご覧に入れます。特に大きな笑いがあったところは、(笑い)を入れます。そうでないところにも終止くすくす笑いがあると想像して読んでみてください。

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01henka.jpg このなかで左の列の赤い部分が、2001年のときは、ほぼ会社のサービス紹介だったんですけど、2007年ですと、すごい隅っこのほうしかないんですね。まあ、母屋を乗っ取った感じではあるんですけど。

(笑い)

このときは、会社にこんな読み物サイトをやりたいとはっきり言わなくて、徐々にちょっとづつちょっとづつ変えていって。

あのニフティっていう会社は、20万以下だと稟議書を書かなくていいんですね。なので全部発注を19万とかにすると、偉い人に気付かれないで、いつのまにかサイトが変わってるってことができるんです。

(笑)

こういうこと言っていいのかなあ。

(もちろんいいです)

まあ調べようと思えばすぐ分かっちゃうんですけどね。こいつ19万ばっかり発注してるっていうのが。

02kakanai.jpg僕のやってきた3つのサイトの共通点はですね、どれも企画書を書いたことがないんですね。勝手に思いつきでやってるというか。19万づつ発注して変えて行ったりとか。

なんでかなあって考えると、僕の考えることって、そんなに面白くなくて、企画書を書くほどでもないかなあって気がするんですよね。

説明すんのが恥ずかしいんです。たとえば、トイレマークって企画では、「トイレの写真を並べたいんですよ」とか。それが面白いかどうかが(自分でも)わからない。

(笑い)

人に「そうなのか?」って言われたら、まあ、わりとノーっていわれると引っ込んじゃうタイプなんですね。企画書を書いたり、人に説明する面倒臭さに負けてしまうんですよ、僕が。

で、そうすると人からあんまり突っ込まれないところを見つけて、小さいところでちょっとづつなんかやっているっていう、気の弱い10年間を過ごしてきたんです。

03tabaco.jpgで、デイリーポータルZで具体的になにをやってるかをちょっと説明すると、 これは「でかいタバコの箱」っていう企画です。

よく物の大きさを基準にするときに、タバコの箱を横に並べたりするんですけど、あのタバコの箱が大きかったら、全部のものが小さく見えるんじゃないかなと思って、これぐらいのタバコの箱を作ったんですけど、見えないんですよね、これが。

(大笑い)

でかいタバコの、たとえば僕が横に立ったら、小人みたいに見えるんじゃないかと思ったんですけど、でかいタバコの横にすわってる人でしかないんですよね。

(大笑い)

こんなの企画書書けるかって話なんですけど。

あと、こういうスタティックな読み物以外に、風邪で休みますというメールを勝手に作ってくれるっていう、ほぼ自分用のツールを作って公開してますね。

04kaze.jpg条件を最初に選んでいって、何で風邪ひいたとか、人のせいにするとか、自分のせいにするとかやると、それっぽい文章が出来上がるっていう、これは非常に便利なツールです。

このときも簡単なパールのスクリプトで書いただけで、あんまり会社にこのスクリプト動かしていいですかっていわずにやってしまって、今ヒヤヒヤしてるんです。

あとですね。これもくだらなかったんですけど、「お風呂でどこから洗うか」。アンケート企画でどこから洗うかというのを聞いて、多かったところの色が濃くなっていくっていう企画をやりました。

05huro.jpgこれは、まあまあ答えてくれたんですけど、「今どこ痒い」っていう同じような企画で、日本中の人の痒いところが赤くなるっていうのをやったところ、全然うけなくてですね。わりと失敗も多いんですよね。


僕のやってきた方法っていうのは、企画書を作るのは無理なんですが、サンプルならできるかなっていうのがあって、作ってから見せてしまえばいいかなと考えています。

社会人として、カッコよく偉い人の前でプレゼンして予算取ってとか、そういうのにも憧れるんですけど、無理なものは無理だなって最近思ってですね。

先に怒られない場所を見つけて、勝手にやるのが一番僕に向いてるのではないかと。作ってから見せると、すぐに反応があったり、失敗もするんですけど。

こういうプレゼンを人前でやること自体が、すごく冗談みたいなんですけども。

06kikakumuri.jpg右の写真は最近デーリーポータルZで始めた「ちょっと見てきて」っていうものです。

思い出の場所を地図上にポイントすると、たまたまその近くに住んでる人が見てきて写真を撮ってきてもらうのを待つっていう、好意だけで成り立ってる企画ですね。なぜか予想以上に受けてというか、みんな見てきてくれるんですね。何の報酬がなくも。

これも、今動いているものはちゃんと開発したんですけど、その前のトライアル版は私が勝手にグーグルマップを使って作ったものです。

そうすると、うけるかどうかがそのときに大体わかります。うけなかったら無かったことにすればいい。

(笑い)

07Tshatu.jpgま、失敗もするんですけども、失敗の面白かった例がですね。個人のサイトなんですけど、右のイラストのイラストみたいなTシャツを作りたいって日記に書いたんですね。ああいうTシャツを作ると、シャツのすそをズボンに入れたとき、何かがはみ出したみたいになって面白いんじゃないかなと。

(笑い)

そしたら、「こんなの作ったりしてー」みたいなトーンで書いたら、作ったら買うってメールが来たんですよ。3人から。で、僕は気をよくして200枚作って、イベントで売ってみたら、ホントに3枚しか売れなかった。

(大笑い&拍手)

よくほら、ニーズがちょっとあると「氷山の一角だ」っていいますけど、一角じゃないですね。氷山の上だけだったんですね。そのときは残りの197枚を袋に詰めて布団にしようかなって思ったんですけど、いまパジャマとして大活躍してます。

さっきの「今どこ痒い」とか、失敗はしても、こういう機会で喋ると面白いんですね、失敗したことのほうが。だから失敗したことはネタだと思って自分のなかで折り合いをつけるとワリと精神的に安心かなと思います。

08ugoku.jpgこういう感じでインターネットで活動してきて、僕ができるのは、「とりあえず動いてみる」っていうことかなと。

この写真は、知らない人の結婚式の二次会に混ざるっていう企画で。

(笑い、そして、やだこれすごいというつぶやき)

僕、こういうことする人間じゃなかったんですけど、追い詰められて何かやんなきゃって思って。これはうけたんですけど、物凄く怒った人もいて。

(笑い)

ほんとに、大変な騒ぎにならなきゃいいんですけど。で、これこそまさに、企画書は書けるわけがないというか。

(大笑い)

やってみないと面白いかどうかわかんないんですよね。それがわかったら便利だなって思うんですけど。


で、大きい話をすると、こういう個人の思いつきの瞬発力が一番向いてる媒体はインターネットしかないんじゃないかと思うんですね。

たとえば印刷や出版となると、機械を持ってる出版社とか印刷屋さん、取次さんとか、そういったところとお話をしなくちゃならなくて、僕みたいに気の弱い人間は、そこでへこたれてしまうわけですよね。

インターネットって一人でできるし、だれかに思い付きを説明しなくても、まずは形にできちゃう。これはとても便利だなと。

さらに、テレビ局は大きな資本があって設備を持ってて、とてもかなわないんですけど、インターネットだと個人も法人もそんなにかわらないかなと思います。

ストリーミングとかだと、ハードや回線で大きな差が出ちゃうんですけど、思い付きで始める分には、ひとりも会社もそんなに関係ないかなと思っていて、こういう媒体は、目立ちたがりだけど引っ込み思案の僕みたいな者にはぴったりだと思っています。

こうした話をするとですね。インターネットは「とりあえずの媒体」ではないかと。最後にブログの話につなげると、個人の思い付きがうっかり影響力をもってしまう、奇跡みたいなツールじゃないかなと思います。

なんて、強く言う気もないので「じゃないかな~」くらいのつもりでおります。

とりあえず、みんなブログだったり自分のサイトだったり、躊躇しないで思いついたことをただやる、楽しい順にやることで、ストレスなく続けられるんじゃないかなと思っております。

私の講演はこれで終わりです。どうもありがとうございました。

(拍手)

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印象的なのは、とってもたくさんのトライをし続けていること。そして、「面白いかもしれないな」と思ったものをどんどん出すこと。

人を惹き付ける面白いサイトができて、ずっと続いている背景には、その積み重ねがあるんですね。また、それはブログを書く動機や、書き続けるモチベーションにも通じているよなと感じさせてくれる講演でした。

ところで、来場者のなかに「その197枚のTシャツ、このイベントで売ってたら1枚買ったのに」という人が2人いました。よいお話の直後に、Tシャツへのニーズの氷山が新しくできたわけですね。

もっとも2人分だけかもしれませんが。

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